パイロット

おはようございます(いま朝なんです)

新型コロナ感染拡大による緊急事態宣言が解除されました。

飲食店でお酒が飲める解禁ですねw

取引先の酒屋さんも活況ですし、SNSには飲食店で飲んでる写真がたくさん流れてきます。お酒禁止のような理不尽な要求がもう来ないことを祈るばかりですが、コロナは終わったわけじゃないと都知事もおっしゃるように、消えたわけではないので一定の注意は怠れません。

さてパイロットですが、僕がこの言葉を覚えて使ったのは有線テレビ放送技術者時代でした。電線などにぶら下がってるお弁当箱のようなアンプと呼ばれる装置があるんですが、テレビ地上波は1・3チャンネルと4~12チャンネルの2域の電波をつかっていて、1・3は周波数帯域が低い(遠くまで飛ぶ)FM域に近いものと、周波数帯域が比較的高い(直進性が高い)ものを使っています。現在は光ケーブルを利用して遠くまで減衰せずに伝送することが可能となり、インターネットや衛星反射波で非常に多くの情報が流れています。もはや地上波帯域の利用割り当て(普通のテレビ視聴)に意味があるのかわからない状態ですが、国際ルールにのっとって日本は電波を利用していますので、そう簡単に消滅するものでもありませんが、これからの電波利用基準は刷新されてくるでしょう。

基準という言葉が出たところで本題に入ります。

僕が使っていた電波用語では、この基準というものがパイロットということになります。

1~12チャンネルまで、それぞれ特徴上周波数が高い電波ほど伝搬損が多くなります。遠くに運ぶと減るんですね。

そのためチャンネルごとに管理できるチャンネルプロパーアンプという増幅器をつかい、発信元で減衰率の高い12チャンネルを強めに出して、1チャンネルをもっとも弱く、きれいな坂道になるバランス送信しています。そうすることで到着時のバランスを正常にすることができるのですが、何段ものアンプカスケードを通過するにしたがって中域(4~6チャンネル)が上がって山なりになったり、反対に下がって弓なりになってしまったりと、せっかく作ったバランスが崩れていきます。

アンプにはこれを修正するイコライザーが搭載されていて、山を上げたり下げたりします。このとき、何を基準にどこの帯域を上げたらいいか、機械には判断できないので、大元のチャンネルプロパーアンプからの発信で、12チャンネルの外にチューニング用のパイロット波を流します。

このパイロットは一定の電波であって、12チャンネルのバランスをとるために実際の利用電波ではない周波数に設定されます。アンプはこれを基準にイコライザーをあげさげるするように設計されています。

ここまで妙に専門的な話でしたが、今どきのインターネット利用者の皆さんには古典的アナログ世代の呪文にしか聞こえないところでしょうか(笑)

パイロットはいろんなシーンに使われている用語です。

例えばルアーフィッシング。ブラックバスに代表されるルアーフィッシングは、フィールドに着いてなにをしていいかわからないときに使われるのが「パイロットルアー」と呼ばれます。だいたいバイブレーションプラグが主流でした。

このパイロットルアーに、どのような反応があるのかないのか。それを見極めてフィールドのコンディションや魚の動きを見極めて作戦を立てるのです。

 

パイロットは一つの基準になります。僕もいろんなシーンでこのパイロットの存在とその理屈を取り入れてきました。

 

珈琲も焙煎度や味の方向性を表現するときに何か基準が欲しいところです。

深煎りか、酸味か、発酵感あるナチュラルフレーバーか・・

しかし珈琲の風味やそれぞれの味わい方には途方もない種類と奥行きがあります。

珈琲屋が表現する「珈琲らしい」とか「深いコク」というのはいったいどういう基準をもって示されているのでしょうか。

謎ですね。

今朝、インドネシアの珈琲をハイロースト(当店基準では2ハゼ頭かその手前あたり)で昨日焙煎したものを87度程度で割と早め(自分基準)で淹れたものをすすっていて感じたんですね。

スマトラウォッシュは独特の世界で、ほかの珈琲とは似て非なるものだと。

もっというと、各国で珈琲の実を育てて似たような方法で精製されて作られ、流通に乗って世界に広く愛されている珈琲に、一つも同じものはないんです。そしてそれを楽しむためのツールやメソッドにもそれぞれ狙った風味を味わうための文化があって、日本では一般的なドリップ式をはじめ、エスプレッソやフレンチプレス、トルコ式、コールドブリューなど様々なメソッドがありますし、焙煎の窯も更なりです。

 

ここで気づきました。

このままでいいんだ。と。

基準となるパイロットを一つ設定してしまうと、もうそこにはパイロットに操縦された飛行機に乗っている状態になってしまいます(笑)

スマトラはまったく別の飲み物だと仮定するとどうでしょう。

飛行機の種類から船、あるいは自動車や自転車のような乗り物(飲み物)だとみれば広がりがありますよね。

僕のポジション(珈琲を販売する側の人)だと、様々な味覚や価値観の方にお渡しするための広がりは重要で、個人的な好みのパイロットだけで評価したり表現したりしてはいられないのですね。

まえにもお書きしましたが、お客様におかれましてはこの反対に「パイロット」方式を導入して究極を求める旅に出られることをお勧めしたします。求めることが風味と感覚の織り成す魅惑の世界へと誘うことでしょう。

ちなみに多くのお客様にパイロットとしてお勧めしているのがブラジルのナチュラルです。できればハイロースト(当店基準)でお試しください。

そこから始まる沼の世界へ、丸茂珈琲と一緒にいってみませんか?

 

そしてまたこのニュートラルゾーンへ帰ってきてしまう、不思議な世界へと扉は続きます。